重荷電粒子の気体に対するW値の測定
重荷電粒子のW値は、放射線物理、放射線計測、放射線化学、医学物理、宇宙放射線の分野で重要。
医療分野では、吸収線量を推定する際の不確定さの原因となっています。
本研究では重荷電粒子に対するW-値のエネルギー依存性、粒子依存性を明らかにすることを目的としています。
入射重イオン種 He2+、C6+、 N8+、 Ne10+、Ar18+として、 試料気体を(1)最も確立されたW-値をもつアルゴン、 照射線量、吸収線量の評価に重要な空気として1イオン対を生成するために必要な荷電粒子の平均エネルギー(= W-値(W-value) )を測定します。W値は
W (eV) = T / Ni [微分W 値:Wdiff(eV) =w (eV) =DT/DNi ]
により求めます。ここで T : 物質中で消費される粒子のエネルギー、 Ni : 生成イオン対数です。
測
定には、独自に開発した平行平板型電離箱(PIC)に分割収集電極(Segmented Collector
)を備えた検出器でNiを、TOF装置によりTを測定します。Tはエネルギー減弱装置(Al箔0〜154mm厚)により容易に変更可能です。装置の図を以
下に示します。
電離箱の出力は以下の2つの方法で取り出します。
(1)パルス法:グリッド電離箱(GIC)による電子収集(希ガス、窒素等)
→ 入射粒子ごとの電離を測定可能(入射粒子数を確認可能)
(2)直流法:電流計によるイオン電流の測定(空気 、不純物の多い気体)
→ 高速電流増幅器を用いた遅いパルス法(PIC)
実験により得られた重荷電粒子のエネルギースペクトルを
以下に示します(C6+イ
オンを組織等価ガス(753 Torr. 23.9 oC)に入射した場合)。複数の重荷電粒子が入射した場合に相当する信号が観測され、これか
ら重荷電粒子1個あたりの電荷量を求めることができます。
アルゴン並びに空気中のHe4+、C12+、N16+、Ar40+等の重イオンに対して測定を行いました。空気の測定結果の例を以下に示します。Heを除
く重粒子に対しエネルギー依存性があることがわかってきました。
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参考文献
- Ionization Yields for Heavy Ions in Gases as a Function of
Energy, S.Sasaki, T.Sanami, K.Saito, K.Iijima, H.Tawara, E.Shibamura
and A.Fukumura, IEEE trans. on Nucl. Science 52 2005 2940